フエはベトナム王朝最後の都として栄えた古都で、宮廷文化を感じさせる華やかなホテルが多くあります。ベトナム中部のホテルを探すと、海辺のダナンには大型リゾート、古い商家が残るホイアンには小規模なブティックホテルが目立ちますが、フエでは王宮の装飾、阮朝の色彩、フランス統治時代の建築を取り込んだ高級ホテルが揃います。金色の意匠や深い赤、濃い木色、龍や鳳凰の文様、天井の高いロビー、庭園に囲まれた木造建築など、街の歴史をホテルの内装や外観に映している点が特徴です。
フエは1802年から1945年まで阮朝の都が置かれ、政治だけでなく文化と宗教の中心でもありました。王宮、寺院、皇帝陵、貴族の庭園住宅が残り、1993年にはフエの建造物群が世界文化遺産に登録されています。こうした土地では、客室の広さや設備だけを競うのではなく、古都らしい建築や調度品まで含めて滞在を設計するホテルが育ちました。「フエはベトナムの古都だからゴージャスなホテルが多い」という言葉には、単に五つ星ホテルの数が多いというだけでなく、王都の美意識を現代のホテルで味わえるという意味があります。

王都の美意識
フエの高級ホテルで目につくのは、阮朝を思わせる色と文様です。王宮では屋根や柱、扉に龍、鳳凰、雲、花などの装飾が施され、建物の用途や格式に合わせて色彩も使い分けられました。現在のホテルも、その意匠をそのまま模倣するのではなく、壁面の文様、照明、家具、絨毯、陶器、客室の配色に取り込み、現代の滞在空間として整えています。34階建てのメリア・ヴィンパール・フエでは、金色の龍や鳳凰、山と海を表した模様が館内に配され、街の中心部にある近代的な高層ホテルでありながら、フエの王都らしさを明確に打ち出しています。
シルク・パス・グランド・フエも、宮廷の華やかさ、フランス植民地時代の趣、現代的な設備を一つの建物にまとめたホテルです。広いロビーやシャンデリア、曲線を使った階段、淡い色調の客室には、一般的な都市型ホテルとは異なる格調があります。インドシナ・パレスでは、コロニアル調の館内と庭園が組み合わされ、都市の中心にありながらホテル内で過ごす時間も充実します。フエのゴージャスなホテルは、派手な装飾を並べるだけではなく、王朝とフランス文化が同居した街の歴史を、建物全体で表しているのです。

フランス建築のホテル
フエのホテル文化を語る際、阮朝だけでなくフランス統治時代の建築も欠かせません。代表的なのが、フォン川沿いに建つアゼライ・ラ・レジデンス・フエです。中心となる建物は1930年代にフランス人高官の官邸の一部として造られ、水平線を強調した外観や船を思わせる曲線を持つアールデコ建築が残されています。約2.5ヘクタールの敷地に122室の客室とスイートがあり、川に面した庭園、長いプール、白を基調とした建物が一体となっています。
このホテルの華やかさは、金色の装飾を多用する宮殿型とは異なります。幾何学模様の床、丸みのある窓、端正な家具、白壁と濃い木色の対比によって、1930年代のインドシナを感じさせます。フォン川越しに古都の景観を眺められるため、フエの歴史を朝から夜まで身近に感じられます。王朝建築とフランス建築が一つの街に残ることが、フエの高級ホテルに幅を持たせています。

庭園住宅に泊まる
フエでは、大きな建物だけがゴージャスなホテルではありません。旧王都の周辺には、ニャールオンと呼ばれる木造の庭園住宅が残り、柱や梁を組み上げた家屋、池、石畳、果樹、花木が一つの敷地に配置されています。キムロン地区にあるアンシェント・フエ・ガーデン・ハウス&フレンチ・ヴィラは、フエの伝統住宅とフランス風ヴィラを組み合わせ、客室、庭園、宮廷料理、スパを同じ敷地で楽しめる小規模な高級ホテルです。大理石の広いロビーではなく、門をくぐった先に木造家屋と庭が続く構成に、古都の暮らしが表れています。
郊外のピルグリメージ・ヴィレッジ・ブティック・リゾート&スパも、緑の多い敷地に客室とヴィラを配置したフエらしいホテルです。173室の客室とヴィラがあり、伝統建築を意識したプールヴィラ、庭園を望む客室、ヨガや太極拳、スパなどが用意されています。王宮や帝廟を見学した後、木々に囲まれたホテルで夕食を取り、翌朝を静かな庭で迎える滞在は、中心街の高層ホテルとは異なるフエの過ごし方です。

フォン川沿いの滞在
フエでホテルを選ぶなら、フォン川との位置関係を見ておきたいところです。川の北側には王宮と旧市街、南側には多くの高級ホテル、レストラン、カフェが集まっています。チャンティエン橋周辺のホテルなら、夜の川岸を歩き、食事を済ませて客室に戻る日程が組めます。高層階から市街と王宮方面を見渡すならメリア・ヴィンパール・フエ、川辺の低層建築と庭園を選ぶならアゼライ・ラ・レジデンス・フエが代表的です。

王宮観光を主にする場合でも、南岸のホテルに泊まると市内の食事場所の選択肢が多く、帝廟観光の日には車で郊外へ向かえます。キムロン地区の庭園住宅型ホテルは、ティエンムー寺や王宮方面と組み合わせる日程に合います。フエのホテルは、建物の豪華さだけで決めるより、川、王宮、帝廟、夕食場所との距離を見ながら選ぶと、滞在時間を十分に使えます。ダナンやホイアンから日帰りで訪れるよりも、フエ市内に一泊すると、朝の王宮と夜のフォン川を同じ旅行で味わえます。

古都ではホテルも観光
フエのホテルは、観光を終えて眠るだけの場所ではありません。宮廷の文様を取り込んだ客室、フランス時代の官邸を生かしたアールデコ建築、木造の庭園住宅、龍と鳳凰を飾った高層ホテルなど、泊まる建物そのものがフエの歴史を伝えています。朝食会場の家具、廊下の照明、庭に植えられた木、客室から見えるフォン川まで確認すると、同じ五つ星ホテルでも性格が大きく異なることが分かります。
ベトナム旅行でフエを訪れるなら、ホテル選びには少し時間をかけたいところです。王宮と宮廷文化を近くに感じるホテル、フランス建築に泊まるホテル、伝統的な庭園住宅で過ごすホテルのいずれを選んでも、古都の背景が滞在に自然に重なります。フエはベトナムの古都だからゴージャスなホテルが多く、その華やかさには街が二世紀近く王都だった歴史と、阮朝の美意識を受け継ぐ土地ならではの理由があるのです。


