ベトナム中部に位置するフエは、かつて王都として栄えた歴史を持つ街です。現在も都市のつくりそのものが王朝時代の構造を色濃く残しており、観光は自然と歴史の流れに沿ったものになります。高層ビルや派手な商業施設は少なく、街全体に落ち着いた空気が漂っているため、観光の主軸も史跡、景観、文化体験となります。移動距離も比較的短く、徒歩と車を組み合わせれば無理のない日程が組める点も、観光地としての大きな魅力です。

フエ観光の核となる王宮の歩き方
フエ観光で最初に訪れるべき場所は、グエン朝の王都として築かれたフエ王宮です。市内北側に位置し、厚い城壁と堀に囲まれた広大な敷地は、現在も街の中心的存在です。観光では正門から入り、謁見の場、儀式の間、皇帝の生活エリアへと順路に沿って見学します。建物は左右対称に配置され、儒教思想に基づく秩序が視覚的に理解できる構造になっています。
王宮観光の所要時間は約2~3時間が目安で、建築や歴史に興味がある場合はさらに時間を確保すると理解が深まります。単に建物を見るのではなく、なぜこの位置に門があり、なぜこの順序で空間が配置されているのかを意識すると、王朝文化の考え方が自然と見えてきます。王宮周辺には飲食店やカフェも多く、観光後の休憩場所に困ることはありません。
ただ、王宮はベトナム人観光客も非常に多いために、テト正月をはじめ、ベトナムの祝日や週末などはかなり混雑します。そういった日にあたる場合には、訪問時間を調整するなど工夫して観光してください。
また、人気の雅楽ニャーニャックは現在予約制になっていて、事前予約が必要になり、決まった日に演奏されるわけではありませんので注意してください。

フォン河をめぐる街並みはフエならではの景観
フエの街を語るうえで欠かせないのが、フォン河(パフュームリバー)の存在です。この川は市内をゆるやかに横断し、観光ルートの自然な目印になります。北岸は王宮や旧市街が広がる歴史エリア、南岸はホテルやレストランが集まる滞在エリアとして役割が分かれており、観光計画を立てやすい構造です。
川沿いの代表的な観光地がティエンムー寺院です。市中心部から車で約15分ほどの距離にあり、フォン河を見下ろす小高い丘に建てられています。寺院自体は過度に装飾的ではなく、塔と川と空が作り出す景観そのものが見どころです。市内観光の合間に組み込みやすく、滞在時間は30分から45分程度が目安です。
フォン河周辺では、観光船や川沿い散策も楽しめます。特別な知識がなくても、川の流れに沿って歩くだけでフエの街の穏やかさを実感できます。王宮観光と寺院観光の間に川岸のエリアでの散策などを挟むことで、行程に自然な緩急が生まれます。
なお、川沿いにはリゾートホテルがいくつもあり、繁華街も近いために食事するのに良い立地です。できればフォン河近くのホテルに泊まるのが便利でしょう。

皇帝の思想を肌で感じる帝廟観光
フエ郊外に点在する帝廟は、歴史観光の中でも特に評価の高いスポットです。帝廟は単なる墓所ではなく、皇帝が生前に設計させた理想の空間であり、自然と建築が一体となっています。
また、ひとつひとつの帝廟はそれぞれ距離が離れていますので、車での移動が必須となります。
代表的な帝廟がミンマン帝廟です。池や森を取り入れた左右対称の構成が特徴で、散策しながら全体を見学できます。敷地が広いため、観光には1時間前後を見込むと安心です。一方、カイディン帝廟は石造建築と装飾性が際立ち、比較的コンパクトな構造のため短時間でも見学できます。両者を組み合わせることで、フエの帝廟文化の幅を効率よく理解できます。
帝廟観光は半日を確保するのが理想で、市内観光と組み合わせるとちょうど丸1日かかります。自然の中を歩く時間が長いため、静かに歴史を感じたい方に特に適しています。

ベトナム随一の名料理、フエ郷土料理と宮廷料理
フエ観光を締めくくる要素として欠かせないのが食文化と街歩きです。フエは宮廷料理で知られていますが、観光では格式ばった食事だけでなく、街中で味わえるフエ郷土料理も重要な体験になります。香草や出汁を活かした料理は全体的に上品で、観光中でも重く感じにくい点が特徴です。
フエの名物としては、麺料理のブンボーフエとネムルイなどの郷土料理があります。郷土料理はベトナムでいちばん美味しいという人も多く評価が高いですので、必食です。宮廷料理はやや値が張りますが、アンシェントフエなど高級レストランで提供されていて、こちらも人気があります。
夜のフエは落ち着いた佇まいで、川沿いや市内中心部を歩くだけでも十分に雰囲気を楽しめます。派手なナイトスポットは少ないものの、歴史都市らしい落ち着いた時間が流れています。昼に史跡を巡り、夜は街を歩きながら食事を楽しむという流れが、フエ観光では最も自然です。

フエは観光情報が非常に充実しており、王宮やフォン河、ティエンムー寺院、帝廟、そして独自の食文化といった見どころが分かりやすく整理されています。そのため、初めて訪れる方でもスムーズに旅の計画を立てることができ、現地でもゆとりを持って散策を楽しめる街です。歴史の息吹を感じながら、穏やかで上質な時間を過ごしたい方にとって、フエはまさに理想的な旅先と言えるでしょう。
