ベトナム旅行では、フォー、バインミー、ブンチャー、シーフード、南国の果物など、各地の料理を味わう時間も楽しみのひとつです。ただし、暑季は気温と湿度が高く、調理済みの肉や魚介、卵、米、麺、ソースなどが常温に置かれる時間によって、食中毒の危険が高まります。見た目や匂いに変化がなくても細菌が増えている場合があるため、料理の名前だけで判断せず、どこに置かれていたか、注文後に加熱されたか、熱い状態で出されたかを見る必要があります。
ベトナムの食中毒を防ぐには、屋台やローカル食堂を一律に避けるのではなく、食品の温度、保管方法、調理から提供までの時間を確認するのが基本です。高級レストランでもビュッフェ料理がぬるいまま長時間並んでいることがあり、小さな食堂でも、スープを沸かし続け、注文ごとに肉や麺を調理している店があります。店の知名度や価格ではなく、その日の調理台と食材の状態を見て選ぶことが、暑季のベトナム旅行では欠かせません。

暑季は温度を見る
ベトナムの暑季は地域によって時期が異なりますが、日中の気温が35℃前後まで上がる都市もあり、屋外や店頭に置かれた食品の温度も短時間で上昇します。肉、魚介、卵、炊いた米、麺、スープ、パテ、マヨネーズ系のソースは、調理直後であれば問題がなくても、その後の保管状態によって食中毒の原因になることがあります。朝に作られた総菜が午後まで常温で並んでいる場合と、注文を受けてから鍋や鉄板で加熱される料理では、食べる時点での状態が異なるのです。
フォーやブンボーフエなどの汁麺は、スープが十分に熱く、湯気が上がっている店を選びます。生の薄切り牛肉を熱いスープで加熱するフォー・タイでは、肉の赤い部分が残っていないかを確かめてください。炒め物、焼き肉、揚げ春巻きも、作り置きより注文後に調理されるものが合っています。購入した料理を暑い車内や屋外で長時間持ち歩かず、できるだけ早く食べることも、ベトナムの食中毒を防ぐ方法のひとつです。

バインミーは特に注意
ベトナム旅行で特に気をつけたい料理がバインミーです。パンそのものではなく、中に挟まれるパテ、ハム、チャーシュー、鶏肉、卵、マヨネーズ系ソース、キュウリ、なます、香草などが食中毒と関係します。加熱済みの食品と生の食品が同じ場所で扱われ、包丁、まな板、トング、調理者の手を介して盛り付けられるため、具材のどれかひとつでも保管や衛生管理が崩れると、1本のバインミーに原因が重なることがあります。
バインミーを買うときは、次の点を確認してください。
・パテ、ハム、肉、マヨネーズが冷蔵ケースで保管されている
・肉や卵を注文後に加熱している
・具材が直射日光の当たる場所に長時間置かれていない
・作り置きではなく、注文を受けてから仕上げている
・購入後すぐに食べられる時間に注文する
・調理台、包丁、トングが清潔に保たれている
特にパテは肉やレバーを使い、水分も多いため、暑季に常温で置かれているものは慎重に見た方がよいでしょう。焼きたてのパンが温かくても、挟まれたパテやハムが冷蔵されていたとは限りません。パンの温度ではなく、中の具材がどのように保管されていたかを見る必要があります。
ホイアンの人気バインミー店では、2023年9月に大規模な食中毒が発生し、300人を超える人が症状を訴えました。その後、営業を再開していますが、現在でも食後に腹痛、下痢、発熱などが出たとする観光客の投稿が時折見られるようです。個別の投稿だけで食事との因果関係までは確認できませんが、人気店で行列ができているから食あたりの心配がないとは言えません。仕込み量が多い店では、朝から用意された具材が長時間使われる場合もあるため、その日の保管状態を見て判断してください。

店は調理状態で選ぶ
ベトナムで食事をする店は、レストラン、食堂、屋台という分類だけで決めず、食材と調理器具の扱いを見ます。肉や魚介が冷蔵設備や十分な氷の上で保管されているか、生肉と加熱済み食品が離れているか、調理済みの料理にふたやカバーがあるか、店員が現金を触った手でそのまま料理を盛り付けていないかが判断材料になります。客が多い店は食材の回転が速い傾向にありますが、混雑していれば衛生状態まで良いとは限りません。
シーフードは、水槽の魚介を注文後に調理する店か、氷の上で低温管理された食材を使う店を選びます。貝、エビ、カニ、イカは中心まで火が通った状態で食べ、生ガキや半生の貝類は暑季には控えた方がよいでしょう。ホテルの朝食ビュッフェでは、料理が並び始める時間に利用し、卵料理はその場で焼いてもらい、炒飯や肉料理は湯気が残っているものを取ります。レストランでも屋台でも、熱い料理を熱いうちに食べることが基本なのです。

水と氷を確認する
ベトナムでは水道水をそのまま飲まず、キャップの封が切れていないボトル入り飲料水を使います。ホテルの客室に置かれた無料の水も、開封されていないか確認してください。歯磨きにもボトルの水を使えば、水道水を口に含む機会を減らせます。缶や瓶の飲み物は目の前で開けてもらい、開封済みのボトルを渡された場合は交換してもらう方が確実です。
氷はベトナムの飲食店で広く使われており、氷があるだけで危険とは限りません。ホテル、空港、商業施設、衛生管理されたレストランでは、飲料用に製造された氷が使われています。ただし、溶けた水の中にトングが放置されている、店員が手で氷をつかむ、保管容器が汚れている場合は、氷なしで注文してください。生野菜、香草、カットフルーツには洗浄水も関係するため、路上で長時間並んだものより、購入後に自分で皮をむくバナナ、マンゴー、ドラゴンフルーツ、ランブータンなどを選ぶと判断が明確です。

症状が出たとき
ベトナム旅行中に下痢、嘔吐、腹痛、発熱などが出た場合は、観光や長距離移動を続けず、水分と電解質を補います。水だけを一度に多く飲むと吐き気が強くなることがあるため、経口補水液を少量ずつ繰り返し飲んでください。現地の薬局では経口補水塩が販売されていますが、袋に記載された水量を守り、濃く作らないようにします。食事を再開するときは、白粥、米、スープ、バナナなどから少量ずつ食べ、脂の多い料理や飲酒は体調が戻ってからにした方がよいでしょう。
水分を飲んでも吐いてしまう、血便がある、高熱が続く、腹痛が強い、尿の量が極端に少ない、口の渇きや立ちくらみが強い場合は、ホテルや旅行会社に相談し、外国人の診療に対応する医療機関を受診してください。高熱や血便を伴うときは自己判断で下痢止めを使わず、抗菌薬も医師の診察を受けてから使用します。ベトナムの食中毒は、熱い料理を熱いうちに食べ、バインミーの具材と保管状態を確かめ、水と氷を慎重に選ぶことで防げる場面が増えます。人気店の名前だけに頼らず、目の前の食品を見て選ぶことが、暑季のベトナム旅行で体調を保つ基本だといえます。


